代替医療として注目されるヨガ・ピラティスの可能性は
ますます広がりを見せています。メディカルヨガ・ピラティスを
学び、医療現場で、公民館で、スタジオで、
インストラクターとして活躍する先輩たちをご紹介。
近年ヨガやピラティスは深い呼吸を大切にした有酸素運動であり、現在、多くのフィットネスクラブでもプログラムに導入され、心身をリラックスさせる呼吸法で自律神経を整える効果やダイエット・アンチエイジング効果も期待できるとして人気を博していると聞きます。医学的な側面からしても、有酸素運動全般に言えることでもありますが、血流が良くなり、高血圧や心肺機能の改善、心血管疾患の予防、骨を強化し骨粗鬆症を防ぐなど様々な形で健康を維持できるメリットがあります。 同時に筋骨格系の強化も見込まれるため、リハビリに導入できる部分があると個人的に可能性を感じております。一人ひとりの身体の状態に合わせて運動強度を調節できるので、初心者や年配の方も始めやすく、実際に地域で開業されている病院では、治療の一環として、ヨガやピラティスを取り入れているところもあると聞いています。今後、予防医学の観点からも、心身ともに健やかに保つヨガやピラティスが重要視され、医療の現場と連携することも含め、その指導者の活躍の場が広がる可能性は十分にあると思われます。
私が開業する整形外科クリニックに通院する患者さんは、60代、70代、80代といった高齢の方がほとんどです。以前は院内で、介護認定を受けた65歳以上の方を主体とした運動を行なっていましたが、高齢者の方の中には元気だけれど運動不足という方も多くおられます。運動不足によって引き起こされる問題は様々。例えば肥満を合併すると容易にひざや腰を痛めてしまいます。クリニックに併設するロコモ教室は、そういった今はまだ元気な高齢者の方や、運動不足に悩む主婦の方達が、健康づくりに取り組み、先には寝たきり予防につなげてもらう目的で開きました。そんな中、妻がヨガ・ピラティスをはじめたのですが私自身、ヨガやピラティスは医療とは別のものだと思っていたので、すぐに教室の講座に加えることはしませんでした。しかし、妻のレッスンを受けてみて、これは腰痛に対するメニューとして成り立っていると実感。今では運動のきっかけづくりとして、教室の講座の一つに取り入れています。私は痛みを和らげる仕事をしていますが、痛む前にできることとして、運動による予防を推奨しています。
「人生100年時代」という言葉も現実味を帯びてきた昨今。日本は長寿社会である一方で、健康寿命と平均寿命に大きな差のあることが課題とされています。厚生労働省の発表によると、一生涯にかかる医療費は、1人当たり約2566万円とされており、年齢が上がるにつれてその負担も大きくなっていきます。
そのような中「生活習慣を改善することは、疾病予防につながる」ことが周知されつつあります。このことは、生活習慣病など疾病の「未然予防」という考え方を重要視することに繋がっています。まさに国が推奨するセルフメディケーションは、この未然予防が目的であり、それによって医療費の削減効果も期待できるのです。
ますます長寿が進む中で、私たちは、日々をいかに健康に生きるか、また人生をどう有意義に過ごすかという主体的なあり方を問われているように感じます。検査数値が良ければ問題ない。症状が現れていなければ問題ないといった客観的な健康のあり方ではなく、心身とも元気に生涯を過ごすためには、自らの健康は自分で守ることを意識し、日々自分自身と向き合い、主観的な健康を手に入れることが大切ではないでしょうか。
だれもが健康で長く人生を楽しめる、そんな健康長寿社会の実現のためには、セルフメディケーションの普及はなくてはならないものだと感じています。ヨガとピラティスは一過性のブームではなく、医療の現場において、その効果を医師も認めており、“副作用のない安全な健康増進法”の一つとして、その実用性が広がりを見せています。セルフメディケーションの一貫としても、今後益々注目されていくことでしょう。
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